目次
- 1. 経営力向上計画とは?認定がもたらす「経営強化税制」の力
- 2. 【重要】即時償却と税額控除、自社にとって得なのはどっち?
- 3. 【業種別】建設・製造・食品業界での具体的活用シーン
- 4. 販売店・メーカー様必見!「経営力向上計画」をフックにした営業戦略
- 5. 専門家が教える「認定を勝ち取るための3つの急所」
- 6. 行政書士に依頼することで回避できる「致命的なリスク」
- 7. よくある質問(Q&A)
1. 経営力向上計画とは?認定がもたらす「経営強化税制」の力
経営力向上計画は、「中小企業等経営強化法」に基づき、中小企業が生産性を高めるための計画を国が認定する制度です。認定を受けることで、税制、金融、法的保護といった多方面の支援をフル活用できるようになります。
中でも特筆すべきは、「中小企業経営強化税制」です。一定の要件を満たす設備投資を行った際、通常の減価償却とは異なる特別な処理を選択できます。しかし、ここで経営者が最も慎重に判断しなければならないのが、「即時償却」と「税額控除」の選択です。
2. 【重要】即時償却と税額控除、自社にとって得なのはどっち?
多くの経営者様が「即時償却ができる」という点に目を奪われがちですが、財務コンサルタントの視点で見ると、両者には明確な性質の違いがあります。
| 比較項目 | 即時償却(100%償却) | 税額控除(7%〜10%) |
|---|---|---|
| 仕組み | 取得価額の全額を、その年の「経費」として計上。 | 法人税額(支払う税金)から、取得価額の一定割合を「直接差し引く」。 |
| メリット | 短期のキャッシュ増加。 当期の利益を大幅に圧縮し、手元の現金を早期に最大化できる。 | 恒久的な減税効果。 支払うべき税金そのものが減るため、トータルの納税額が減少する。 |
| デメリット | 減価償却費の先食い。 翌年以降の減価償却費がなくなるため、長期的な納税額は変わらない(課税の繰り延べ)。 | 即時償却に比べると、初年度に手元に残るキャッシュのインパクトは小さい。 |
どちらを選択すべきかの判断基準
- 即時償却を選ぶべきケース: 「今期、非常に大きな利益が出た」「借入金の返済や次の設備投資のために、一刻も早く手元に現金が欲しい」という場合。
- 税額控除を選ぶべきケース: 「長期的に見て、支払う税金の総額を減らしたい」「安定した経営を継続しており、恒久的な節税効果を優先したい」という場合。
当事務所では、貴社の財務状況を分析し、数年先まで見据えたシミュレーションを行うことで、どちらの選択が最適かをアドバイスいたします。
3. 【業種別】建設・製造・食品業界での具体的活用シーン
🔧 製造業:工作機械・ロボット導入による自動化
【対象設備例】 NC旋盤、マシニングセンタ、産業用ロボット、3Dプリンタなど
【活用ポイント】
生産性向上のための設備や、人手不足解消のための省力化投資が中心です。多額の投資が必要な製造業では、「ものづくり補助金」「新事業進出補助金」「省力化投資補助金」「中小企業成長加速化補助金」「省エネ補助金」などの補助金を活用しつつ、経営力向上計画も上手に使い、「即時取得」・「税額控除」で実質的に安く抑えるというスキームが非常に経済的です。
🏗️ 建設業:ICT建機・高度な測量機器
【対象設備例】 ICT対応油圧ショベル、測量用ドローン、レーザースキャナーなど
【活用ポイント】
建設業界は2024年問題への対応が急務です。最新のICT建機は高額ですが、経営力向上計画の認定による日本政策金融公庫の金利優遇策(金利▲0.65%)などを活用することで、借入の返済額を抑えることが可能になる場合があります。
🍱 食品製造業:HACCP対応・自動包装ライン
【対象設備例】 金属検出機、急速冷凍装置、全自動包装機、生産管理ERPなど
【活用ポイント】
日々新たな製造機械が登場し、また、製造機械の更新も定期的に訪れます。その際、経営力向上計画を上手に使うことで、借入の枠を広げたり、即時償却による法人税の減少(その年の)をすることが可能な場合があります。
4. 販売店・メーカー様必見!「経営力向上計画」をフックにした営業戦略
機械やシステムを販売する営業担当者の皆様。顧客が「欲しいけれど、今は高いから…」と渋っている時、この制度は最高のクロージング・ツールになります。
使える補助金もコロナ禍よりも難しくなっていますから、有効な手段と考えられます。
例:3,000万円の機械を提案する場合
「この機械の導入を迷われていますか。経営力向上計画の認定による「即時償却」や「税額控除」の制度の活用はご存知ですか?より経済的に購入が可能になるかもしれません。
このように、「単なる価格」ではなく「実質的な投資負担」を提示することで、顧客の決断を早めることができるかもしれません。当事務所では、販売店様向けのサポートや、助言も行っています。
5. 専門家が教える「認定を勝ち取るための3つの急所」
- 「工業会証明書」の取得タイミング: 設備を発注する前に、その型式が税制対象かどうかを確認し、メーカーに証明書の発行を依頼しなければなりません。また、決算期、納期、事業供用年度、工業会証明書取得のタイミング、決算書を一体として検討する必要があります。
- 事業分野の特定: 申請先は「自社の事業分野」によって異なります。経産局、国交省、農水省など、適切な窓口を選ばなければ受理されません。
- 「先端設備等導入計画」との使い分け: 固定資産税をゼロ(または軽減)にするための「先端設備等導入計画」と、法人税を減らす「経営力向上計画」。両者を併用することで、節税効果は最大化されます。
6. 行政書士に依頼することで回避できる「致命的なリスク」
書類作成だけなら、時間をかければ自社でも可能です。しかし、「法的な確実性」と「財務的な最適化」を両立させるのは至難の業です。
- 時期のミス: 設備の取得日と計画の認定日。この前後関係を1日でも誤ると、認定のチャンスが失われます。
- 書類の不備: 差し戻しが多く発生すると、決算期に間に合わなくなるリスクがあります。
- ※経営力向上計画の「作成」を行えるのは、事業者及のほか、行政書士登録を行っている行政書士又は行政書士法人に限られます。中小企業診断士や経営コンサルタントその他の士業が、書類の「作成」を有償で行った時点で行政書士法に違反します。依頼者もそれに関与したことになります。報酬の名目は問わないため、例えば「コンサルティング料」「会費」等、直接的な名目でなくても、有償である以上違反です。ご注意ください。
- メーカーや販売店様で、行政書士登録者以外と提携していませんか?ご注意ください。
7. よくある質問(Q&A)
- Q. 税額控除は赤字の時でも使えますか?
- A. 法人税額がゼロの場合、その年に控除しきれなかった分は「翌年」に繰り越すことが可能です(一定の制限あり)。
- 弊所のサポートは、あくまで経営力向上計画の作成支援、申請支援です。税務に関する個別的な相談にはお答えできません。税理士にお問合せください。
- また、会社の業績によっては、経営力向上計画の認定を受けても十分なメリットを享受できない場合もあります。予めご承知おきください。
- Q. 中古品も対象になりますか?
- A. 残念ながら、経営力向上計画の税制措置(A類型)は「最新モデル」であることが要件となるため、中古品は対象外です。
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【無料診断】貴社にとって「最適な節税案」を提案します
経営力向上計画の申請支援から、補助金の活用、財務分析まで。
行政書士業務としての支援と認定支援機関としての「戦略的な助言」を提供します。
※お急ぎの方、販売店様からのご相談も歓迎いたします。