建設業者は、事業の性質上、受注してから発注者に引き渡すまで相当の時間があります。契約にもよりますが、引き渡し後の支払い(精算払いや完成払い)の場合、それまでの資金繰りをやり繰りする必要があります。
前払い金や、部分払いがあれば、原材料の購入や人件費にある程度回すことができますが、公共工事や比較的規模が大きい工事でなければそれを得るのが難しい場合があります。
■現状変更は簡単ではない。
上記の事は、取引の相手方がいる話です。今すぐに前払いや部分払いを依頼しても、相手方もおそらく難しいでしょう。通常、取引相手とは長年の信頼関係があるでしょうから、短期的に変更することはできないかもしれません。
ただ、長期的に、より条件の良い取引先を探すのは、会社としてはあるべき姿であると思います。
では、取引条件の変更以外には、どのような手段が考えられるでしょうか?
■銀行融資において「当座貸越」枠を得る
銀行融資には4種類あります。
①商業手形割引
②手形貸付
③証書貸付
④当座貸越
です。下にいくほど、必要な信用度合が高くなります。信用度合とは、財務状態となります。当座貸越とは、あらかじめ決められた限度額までなら自由にお金を借りたり返済したりできる融資形態です。
この融資枠を獲得するためには、自己資本比率、経常黒字、業歴等が審査されると言われます。審査は厳しいですが、当座貸越枠を得ることを念頭に入れておくとよいです。
■手形貸付を用いる
俗にテガシなどと呼ばれ、短期融資に用いられます。
「手形」とありますが、受取手形や買入手形とは少し違います。あくまで融資の1形態となります。
工事が完了し、売上が入金されるまでの間に借りるという使い方が行われます。「工事ひも付き融資」などとも言われます。
■短期継続融資を認めてもらう
短期継続融資とは、短期融資の借入、一括返済を繰り返す手法です。
「経常運転資金」相当額であれば、認めてもらえる可能性があります。
これが認められると、経常運転資金相当額の資金を、返済せずに使い続けるイメージとなります。約定返済時に、一括返済と同額借入を繰り返すためです。
「経常運転資金」とは、日常的な取引において、
①仕入代金の支払い
②売上代金の入金
この間に生じる資金的な沈み具合のことを言います。
専門的には、
売上債権+棚卸資産-買入債務
で表現されます。
銀行からの評価が良い段階では、短期継続融資の活用は有効と言えます。
ただし、更新時、継続が認められないと返済することになりますので、銀行の対応が消極的な財務状況であれば、更新拒否を想定し、長期借入を検討する場合も考えられます。
以上のように、建設業経営においては、財務的な対策によって、資金の増減をコントロールすることがある程度可能となります。
このような情報は、金融機関からは積極的には伝えられない事が多いです。
財務に関する相談、コンサルティングをご希望でしたら、弊所までお問合せください。
決算書を拝見し、具体的に改善すべき勘定科目について助言致します。
また事業内容を詳しくお伺いし、昨今重要視されている「事業性評価」についても言及し、今後の資金調達に係る助言を行います。
参考(信用保証協会における短期継続融資に係る保証制度)
※基本的に短期継続融資は、無担保無保証を目指します。