「経営力強化計画」という、設備投資をする際、①税制措置、②金融支援、③法的支援が受けられる国の制度をご存知でしょうか。補助金や資金調達を行う弊所が、簡単に解説していきます。
経営力向上計画とは?
概要
この制度は、中小企業等経営強化法第17条に基づく、国の認定制度です。
似たような制度で、「経営革新計画」や「先端設備等導入計画」も、この法律が根拠となっています。
経営力向上計画は、人材育成、コスト管理等のマネジメントの向上や設備投資など、自社の経営力を向上するために実施する計画で、認定された事業者は、税制や金融(融資利率)等の支援等を受けることができます。下記概要図参照。特に税制については(2023年10月現在)、設備の取得につき、法人税について即時償却又は取得額の10%の税額控除が可能となっています。
2023年10月現在、事業再構築補助金、ものづくり補助金、小規模事業者持続化補助金などの補助金を用いて導入した設備等に対しても、利用が可能とされています。
つまり、設備投資を検討 → 補助金 & 経営力向上計画が使えないか
と考えることで、より経済的な設備投資策が見えてくる可能性があります。
ただし、補助金は採択されるまでの期間が読めない不確実性があります。いつまで補助金の採択を追うか(不採択が続いても採択されるまで申請するか)は経営判断となります。一方、経営力向上計画は要件を満たしていれば、ほぼ全て認定されると言われています。
購入する機器の種類や、業種によって、事前確認をする機関、確認書を発行する機関、経営力向上計画の申請書を提出する行政庁が異なりますので、これらを整理して考えるとよいです。
■おおまかな認定までの流れ
税制措置の内容
法人税について、
1 即時償却
2 取得価格の10%(または7%)の税額控除
が選択適用できます。
※青色申告をしている中小企業者が対象です。
設備の価格要件
■設備の価格要件
設備の種類 | 機械装置 | ソフトウエア | 器具備品・工具 | 建物付属設備 | 備考 |
金額 | 160万円以上 | 70万円以上 | 30万円以上 | 60万円以上 |
申請の類型 A~D類型
A類型(生産性が年1%以上向上する設備導入、工業会が証明書発行。事前確認&確認書の発行が不要)
■申請までの流れ
設備を購入する事業者は、メーカーに対して、工業会に証明書を発行してもらうよう依頼します。証明書が入手できましたら、申請書類を作成し、事業内容に応じ、主務大臣に申請します。全て経済産業局長宛ではなく、建設業は地方整備局、動物病院は農政局、医療・保育・介護・障害福祉は厚生局など事業分野によって申請先が変わります。以下BCD類型も同様です。
■要件
①一定期間内に販売されたモデルであること(最新モデルでなくてもOK)
②経営力の向上に資するものの指標が、旧モデルと比較して1%以上向上している設備(生産効率、エネルギー効率、精度など)。ソフトウエアについては、情報収集機能及び分析・指示機能を有するもの。
B類型(収益力強化設備、公認会計士・税理士が事前確認、経済産業局が確認書発行)
■申請の流れ
※1 本スキームを利用する際は、導入社の規模によらず、公認会計士・税理士の事前確認が必要です。
確認書の発行を、所管の経済産業局にしてもらう必要があります。
B類型では、工業会の証明書発行ではなく、公認会計士又は税理士の事前確認が必要になります。申請先はA類型と同様に、主務大臣となります。
■要件
年平均の投資利益率が5%以上となる投資計画を経済産業局から確認を受ける。
※「投資利益率」とは、
(営業利益+減価償却費)の増加額/設備投資額
を言います。
「増加額」とは、設備を導入する年度の翌年度以降3年度の平均額です。
「設備投資額」とは、設備を取得する年度におけるその取得価格の合計額です。
C類型(デジタル化設備、認定経営革新等支援機関が事前確認、経済産業局が確認書発行)
■申請の流れ
■要件
C類型は、デジタル化設備です。事業プロセスの①遠隔化、②可視化、③自動制御化のどれかを可能にする設備が対象です。
①遠隔操作
非対面や、通常出勤している場所と違う場所で行うことができるようにする
②可視化
既存事業のデータの収集・分析をデジタル技術を用いて行い、事業プロセスに関する最新状況を把握し、経営資源の最適化に資すること。
③自動制御化
デジタル技術を用いて、状況に応じて自動で指令を行い、事業プロセスに関する経営資源等の最適化に資すること。
D類型(事業承継関連)割愛します。
金融支援
①日本政策金融公庫による融資の優遇
設備資金については、金利に係る審査の際優遇される事を期待できます。
ただし、経営力強化計画の認定を受けても、設備資金の金利優遇が期待できるのであって、建物の建設資金まで金利優遇されません。工場や倉庫を建設する場合、この計画のみに頼ることはできないのです。それらの設備投資を経済的に行いたい場合、「経営革新計画」の認定によりそれを達成できる可能性があります。ただし、高い付加価値を生み出すものとして、計画を立てる必要があります。
また、どれくらい金利が優遇されるか?の問いに対しても明確な回答はできません。なぜなら、この経営力向上計画の提出をもって事務的に適用金利が決定されるものではないからです。会社の業況、収益の将来性、担保、事業性評価など、総合的に審査の上決定されるからです。
とはいえ、計画の認定によって、制度的に基準金利よりも優遇された金利適用が経済産業省の資料にはありますので、より良い条件で借入が可能とは言えます。
②保証協会の枠が追加
信用保証協会の保証枠が増えます。
これについて、保証額が増えるからといって、増えた分借入ができるわけではありません。
③中小企業投資育成株式会社法の特例
省略。
④スタンドバイクレジット
省略。
⑤クロスボーダーローン
省略。
⑥中小企業基盤整備機構による債務保証
省略。
⑦食品等流通合理化促進機構による債務保証
補助金の加点になります
国の
・小規模事業者持続化補助金
・事業承継・引継ぎ補助金
で加点になります。
小規模事業者持続化補助金とは、販路開拓のためにチラシの作成・配布や、機器の購入、建物の改修に使うことができる国の人気の補助金です。
年々、補助金額が増加している傾向にあり、通常枠は50万円、創業枠は200万円(令和5年4月現在)などとなっています。創業枠などの特別枠は100万円を超えますので、何としても採択を勝ち取りたいという事業者は、事前に経営力向上計画の認定を受けておくのも1つの策となります。
ただし、1点注意があります。小規模事業者持続化補助金の募集は、年に数回区切られていますが、経営力向上計画の認定は前もって取っておかなければ間に合わないのです。
例えば、第12回公募を例にしてみますと、
○公募要領公表: 2023 年 3 月 3 日
○申請受付開始: 2023 年 3 月 10 日
○申請受付締切: 2023年6月1日
認定基準日(締切日)2023年3月31日 (までに取得の必要あり!)
となっています。申請する小規模事業者持続化補助金の実施回の公募が始まってからだと遅いのです。これを知らないと、この加点を受けるのは困難ですが、知っていれば前もって対策も可能です。
補助金と併用できます
経営力向上計画は、租税措置、金融支援、法的支援など様々なメリットがありますが、他の補助金制度と重複して活用することができます。
例えば、ものづくり補助金を活用して、革新的な製品の開発を行うため、高額の機器を購入。購入後、経営力向上計画の遡及手続きを行い、認定。その年の税務申告の際に機器の取得価格を即時償却する等です。
補助金申請を考えた際は、経営力向上計画も同時に検討してください。
これを提案できないコンサルタントは設備導入に係る専門知識が少し欠けている可能性があります。
ものづくり補助金・事業再構築補助金の交付決定を受けた際は検討を
・決算時期との兼ね合いもありますが、補助金の交付決定を受けた後でも申請を検討してください。
・繰り返しになりますが、経営力向上計画による税制優遇と、補助金の給付は併用が可能です。即時償却や法人税の減税によって、手元に残る現金が増加したり、法人税減税によって節税効果を期待できます。
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